音楽家の思い出

私が愛した音楽家で唯一亡くなった人がいる。いわゆるボカロPでニコニコ動画で一斉を風靡したジャンルであるボーカロイドを使って音楽を作っていた。

彼の音楽の特徴はシンプルな音と繊細なリズム、その意味不明な歌詞は声を楽器としか思ってないのではないかという程だ。

16歳で家の事情で高校を辞め、中学生からやっていた動画投稿をメインに音楽活動をする。事務所に所属してからはソーシャルゲームディバインズゲートのコラボダンジョンの音楽を担当したりと大手とは言えないものの公の仕事をこなしていく。

私は動画で出会いその音楽を好きになった。動画が投稿されれば見て、アルバムが出る度プロモーションビデオを見てカッコ良い曲が入っていれば買っていた。

確かボーカロイドの全盛期から1年後くらいだっただろうか。動画自体を見なくなっていた時期にふと音楽を聞いていると流れてくる彼の曲。
新盤出てるかな、思い立ちログインするとつい最近アルバムを出していたようだった。動画を開くと流れるコメント。

『うぽつ』『ボカロはオワコン、米津と逃げろwww!』『ぽわさんのおんがくすきです!』『今回微妙だな』『←なら見なければいいのでは?』『まだ19なんだよね、すごい!』『←中学生の時からやってるらしい・・・』『劣化したな買わねぇわ』

目を細める、しばらく見ないうちにニコニコ動画のコメントというものが自分にはキツくなっていた。昔は十分楽しめていたのに、そう思いながらコメントを非表示にした。プロモーションビデオをじっと眺めるが5分も見れずに閉じる。動画や音楽に集中できない、いつの間にかここは自分の居場所ではなくなっていた。ニコニコ動画が劣化したのではなく私が卒業したのだろう。老害は荒らさずただ去るのみ。私は彼と静かに決別を遂げた。最後まで見れなかったプロモーションビデオ、そのアルバムの名前を「生きる」という。

ある日Twitterのリストを整理していると音楽のリストに名前があった。おっ最近どう?そんな気分で開く彼のページ。並ぶファッションメンヘラオシャレツイート、変わらないなと安心した。ふと最新のツイートに目をやると昨日のポストがたくさん拡散されていた。

椎名もた – Verified account ‏@siinamota
大人になったから魅力がなくなった、と。
大人になってはいけないらしいですね
4:48 - 2015年7月23日

内容は特に受けを狙っていっているようには思えない。メンションを見るとご冥福をお祈りしますという文字の羅列。私はYahoo!に彼の名前を打ち込む。

7月23日、小田急線が止まった。


ファッションメンヘラなんてやってるから本当にピーターパン症候群発症しちゃうんだよ、馬鹿だな。中卒がよぉ!?コメント効いちゃう奴が動画なんか投稿するな!!しばらくは怒りで手が震えた。そして何分かしてとても寂しくなった。
二度と動かない彼の時間、同様に残された曲も色褪せず輝き続けるだろう。


好きな曲:






このニコレポを見てまた久しぶりに奴の事を思い出したので記事を書いた。20歳で止まり続けたかったというより、やっぱり大人になりたくなかったんだろう。
そういう選択肢もある……わけないのに。